今月の生産者

よむ

2020年4月20日

すごい豆腐に、出合ってしまった。 真狩村・湧水の里

お財布に優しく、栄養満点。
江戸の中頃から庶民の生活に
根付いてきた豆腐は、
決して派手ではないけれど
日々に欠かせない食材ですね。

どんな料理にも馴染み
「あなた色に染まります」と
いつも自己主張控えめですが
…出合ってしまいました。
圧倒的な存在感を放つ
主役級の‟すごい豆腐”に。

岩塩とオリーブオイルを
かけて、そのままひと口。
豆腐の概念が、変わります。

取材・文・編集/青田美穂 撮影/石田理恵


まるでスイーツ!?

‟すごいとうふ”は本当にすごかった!

製造から完成した豆腐の冷却まで、使用するのはすべて天然の伏流水

何がすごい? 「水」がすごい

 真狩村にある豆腐工房・湧水の里は、名水スポットである‟羊蹄山の湧き水”のすぐ横に立っています。
どちらも人気が高いため「水をくみに」また「手作りの豆腐を求めて」訪れたことのある方も多いのでは。
 22年前、創業者である先代がこの地に工房を開いたのは「水の良さにほれたため」。
現在、取締役常務を務めている渡辺英人さんに、豆腐と水の重要な関係性を聞きました。
 「豆腐の約90%は水でできておりおいしい豆腐づくりには、良い水が大量に必要となります。雨や雪解け水が数十年の歳月をかけて大地のフィルターでろ過され、マグネシウムやミネラルなどをたっぷり含んで湧き出す羊蹄山の伏流水。当工房ではその伏流水を直接パイプで引き込み、豆腐の製造に使用しています」。
 他の土地では地下水の温度が高く冷却して使うケースもあるそうですが、羊蹄山の伏流水は年間を通じて平均6℃で湧出。
実は、この6℃というのがポイントで「豆腐を冷やすのに最も適した温度なんですよ」と渡辺さんが教えてくれました。

工房奥に鎮座する羊蹄山。大自然の恵みがおいしい豆腐を育んでいる

適温で湧出するため、冷却費用がかからず価格を抑えられるのも利点

何がすごい? 「製法」がさらにすごい

 湧水の里では、多種多彩な豆腐を製造していますが‟すごいとうふ”にしかない特徴があります。
一番は「大豆を丸ごと使っていること」。
通常、豆腐を製造する過程で豆乳を搾った際にはおからが出ます。
おからも食材として活用できますが、それはごく一部。
出る量に対して消費が追い付いていないのが実情です。
 「廃棄を余儀なくされる製造元もある中、知人の牧場でおからを堆肥として使ってもらうなど‟捨てない工夫”を重ねてきましたが、おからにも栄養が含まれているので、もったいないですよね」と渡辺さん。
 光明を見出したのは15年ほど前。
大豆パウダーが出回るようになり、湧水の里は「おからを出さない豆腐づくり」への挑戦を始めました。
当時、大豆パウダーで豆腐を製造するところは少なく、ノウハウはほぼゼロ。
原料が変わると仕上がりが異なるため、これまでの製法は踏襲できず、機械も技術も工程も新たに確立する必要がありました。
‟すごいとうふ”が商品化できたのは「小さな豆腐店だったから」こそ。
スピーディーな商品開発と大量生産を求めるなら、成功するとは限らない挑戦に向き合うのは難しいからです。
 作っては失敗、作っては失敗を繰り返しながら商品化レベルに達した後も、味わいの面で細かな調整が続けられました。
「微妙な感覚ではありますが、パウダー特有のざらつきや、舌触りが最後の課題だったと聞いています」。
そこで目を付けたのが、容器の中の水です。
主に形崩れを防ぐために入れるものですが、豆腐は水から上げると水分が抜け出し味が落ちます。
思いついたのが豆腐の生命線である水分を、水ではなく‟豆乳で補う”という斬新なアイデア!
 「豆腐をスポンジに見立てると、濃厚でまろやかな豆乳を常に、豆腐の内部にしみ込ませているような感じです。豆乳に浸してパックすることで舌触りも良くなり、他にはない‟すごいとうふ”が完成しました」。
 ピーク時には、1日2000個売れることも。
自宅で食べるものというイメージを覆し「この豆腐をお土産に」とまとめ買いするリピーターが多いそう。
冒頭の岩塩とオリーブオイルは、渡辺さんオススメの食べ方。
濃厚さと甘さに驚き、トロトロの豆乳がまるでクリームのよう。
しっかりと大豆感があり「栄養を余さず届けたい」という作り手の思いがダイレクトに伝わってきます。

原料となる大豆は道産がメイン。作る豆腐に合わせて、独自にブレンドし使用

特注の道産大豆パウダーに水を加え、加熱しながら攪拌

圧力釜と半密閉釜で二度炊き後、こしてなめらかに

原料をいったん水で冷やし、形に流して凝固剤を加える

カットした豆腐を容器へ。

1丁ずつ手作業で、たっぷりと溢れ出るほど豆乳を注いでパック

 先代に後継者がいなかったため、工房は5年前より渡辺さんの所属会社が引き継いで運営しています。
営業職が長い渡辺さんですが、食品を扱うのは初めて。
「未経験の分野ですが、心から売りたいと思うものを売っている充実感と、売りたいものを自分で生む面白さを今、実感しています」と笑顔を見せます。
これまでの豆腐を大切に守りながら、未来への種もまき始めている渡辺さん。
若い世代にもっと豆腐を身近に感じてもらえたらとおつまみ感覚の‟スモーク豆腐”を考案したり、昨年から道内企業とコラボ商品を開発する新ブランドも立ち上げました。
 湧水の里の商品は、自社のネットストアを除き購入できるのは工房のみ。
その唯一の例外が、コープさっぽろでの販売です。
「ずっとお客様の顔を見て直接販売してきたので、自分たちの手を離れての管理体制や安全なお届けについて不安もありました。ですが、バイヤーさんの熱意に心を打たれたのです」と渡辺さん。
評判を知った釧路や函館などの組合員さんからも「地元のコープで買えないの?」とお店に連絡が入るほど人気で、今後は販売店舗の拡大も検討していきたいとのこと。
なかなか真狩へ行くのが難しいという皆さん、コープさっぽろソシア店、ルーシー店、あいの里店の3店で‟すごいとうふ”が待ってますよ!

ソシア店の「湧水の里」コーナー。多種類の商品が揃っている

渡辺さんが立ち上げた新ブランド‟玄人衆”(くろうとしゅう)。二世古酒造との「豆乳と酒粕のティラミス」、札幌・玉翠園との「抹茶豆乳プリン」などコラボ商品が続々誕生

この記事をシェアする

おすすめ記事

TOPへ戻る