今月の生産者

よむ

2020年1月6日

和寒町 雪の下キャベツ ~ソラナファーム株式会社~

雪はしんしんと、どっさりと。
マイナス30℃近くまで下がる時もある
厳寒の和寒町で、今日も
キャベツの収穫が行われます。

毎日来る新しい朝。毎年訪れる新しい年。
「いつもと同じ、明日も同じ」はなく、
「これまでの当たり前」を続けることが
いかに難しいことか、を痛感します。

まっさらな令和2年の始まりです。
みなさんの、あなたの、私の、
笑顔が輝く一年になりますように。

純白の畑に刻まれる確かな足跡。
きっと毎日が、新しいスタート。

取材・文・編集/青田美穂  撮影/細野美智恵


最も厳しい秋の一次収獲。同時にホッとする瞬間です

 10月末から11月初旬のたった1週間。
冬も間近の秋の終わり、和寒町でキャベツを栽培している生産者の方々は、雪が降る前に一次収穫(根切り)の作業を急ピッチで進めます。
 お伺いしたのは農場の4代目・濱田敏史さんが代表を務める、ソラナファームの畑。
和寒特産のかぼちゃやキャベツのほか大豆、小麦、稲作を手掛けています。
敏史さんは15年前、35歳で父から畑を受け継ぎ2012年に法人化。
専務を務める奥様と二人三脚をしながら、社員2名と4名体制で経営しています。
 越冬させるキャベツの苗植えは7月。
そこからまず、秋の根切りに向けてキャベツが丈夫に健康に育つことに心を砕きます。
「昨年は苗の成長期にあたる春から夏に雨が降らず、畑は干ばつ状態。僕の代で水かけを行ったのは、初めてですね。かと思えば9月以降は雨ばかりで。それでも玉揃いなどの出来は前年より良く、少しホッとしています」と敏史さん。
 丘一面の畑で育つキャベツの数は、約30万玉!
積雪までに1日4万玉ペースで根切りをして数カ所に寄せ、キャベツが快適に冬を越せる環境を整え終えなくてはいけません。
 「腰をかがめて行う根切り作業は、ベテランでも体が悲鳴を上げる過酷さ。一年で一番大変な仕事です」。

傷む要素を減らすため、直接土に触れないよう畑に敷いたビニールシートの上に寄せていく

広大なキャベツの丘で雨の中、朝から日没まで続く根切り作業

根切り専用の包丁は、草刈り機の刃のギザギザを丸くした特注品

出来はあくまでも結果。その過程で、何ができるか?

 冬、キャベツ畑は眩しいほどの銀世界に包まれます。
パッと見、雪原との区別が全くつきません。
ご存じの方が多いかもしれませんが、雪の下キャベツは雪の中に埋めるのではなく、キャベツの上に自然の雪が降り積もることで空気の層ができ、しばれる(凍る)ことなく冬を越すことができます。
秋に寄せておいたキャベツたちは、おしくらまんじゅうのような状態で年末までじっと寒さに耐え、和寒町の豊富な雪のゆりかごで少しの眠りにつきます。
その間に甘みをたっぷり蓄えて、年が明ける頃にようやく商品として完成。
いよいよ、出荷に向けて本収穫(掘り起こし)が始まります。
 「キャベツを寄せた場所にはあらかじめ印が付けてあり、パワーショベルで傷つけないように道筋を作りながら人が手で掘り起こしていきます。朝から日没までずっと、雪の上に這いつくばっているので体の芯から冷え切っちゃうんだけど、今日は天気が良くて有難いね」と笑顔を見せる濱田さん。
晴天とはいえ、30分も畑に立っていると顔はこわばり、手がかじかむ寒さです。
この日の人員はソラナファーム社員、派遣スタッフなど全9名。
濱田さんがショベルで作った溝に入り、皆で一斉に手掘りします。
低温で変色した“おにっぱ”と呼ばれる外葉を数枚むくと、久しぶりに太陽の光を浴びる淡いグリーンの美しい球体が現れました。
 「作っているのは“冬駒”という品種。越冬させる前提の品種なので寒さに負けない分、肉質は硬め。だけどとにかく甘みが強い。うちの定番はやっぱり煮込み料理だね」。
 後日、濱田さんおすすめのポトフを作ってみました。
具の他は水と少量の塩だけ。
スープを味わうと、これが本当に甘い!!!そして旨い!
知らずに食べた家族から「今日、砂糖入れたの?」と聞かれるほど。
 実はこの甘み、品種の特性や冬を越す作用だけではなく、濱田さんの探求心と土へのこだわりが生む、努力の賜物なんです。

雪の下キャベツの出荷は1~3月。期間中の出荷予定に合わせて随時、雪の中から掘り起こす

1玉2kg前後とずっしり思いキャベツを収穫するのは、氷点下の雪の上でも汗をかくほどの重労働

変色した外葉はその場で省き、省かれた外葉は雪解け以降、そのまま畑の栄養となって吸収される

ソラナはスペイン語で「ひなた」の意。敏史さんは父の代に27haだった畑を倍以上に拡大し、家族経営から法人化するなど挑戦を続けている

自慢の雪の下キャベツを手に。寒い中でも、明るい雰囲気で収穫を進めていく皆さんの笑顔が印象的だった

 毎年、気象状況は目まぐるしく変わり、これまでの実績や経験を頼りにできない時代が来ています。
濱田さんも「当たり前だったことがそうじゃない今、小さくてもできることを考えて“当たり前を維持する努力”をしていかないと」と話します。
 そのベースは、土をより良くするための追求。
キャベツは水に影響されやすく、土には“保水力”と“排水力”の両方が求められるそう。
そして水分バランスのとれた土に、最適量の有機物や堆肥を入れて地力をキープ。
毎年、全圃場の土を採取して土壌調査を行い、成分の微妙な変化も見逃さないよう目を光らせます。
 ソラナファームでは、土が良い状態であれば農薬や化学肥料の使用を最小限に抑えることができると考え、特別栽培や有機栽培にも積極的に取り組んでいます。
また法人化後すぐ、JGAPを取得。
これは農林水産省が推奨する、食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証制度で、120以上の項目をクリアして初めて得られる信頼の証しです。
その年の出来は「過程でどれだけ努力できたかの結果」と濱田さん。
未来の目標は「肥料を使わなくても、良い野菜ができる畑を作ること」。
大きな目標を胸に、濱田さんはその過程を一歩ずつ進みます。

外葉は5~6枚落とすのが一般的。濱田さんの畑は管理が行き届いているため、省くのは2~3枚だそう

信頼のおける町内生産者の収穫物も含め、倉庫で一時保管。ここからトラックで各所は運ばれる

この記事をシェアする

おすすめ記事

春は白かぶ JA新はこだて

春は白かぶ JA新はこだて

北海道に住む私たちにとって 長い冬を乗り越えて迎える春は (たとえ記録的な少雪でも) 格別の悦びがあります。……

TOPへ戻る