-Story02- 「私たちの商品に、私たちの声を」アイスに込めた組合員さんの思い

組合員さんと作るアイスクリーム商品開発プロジェクト。前回はコープさっぽろ商品開発部の髙森さんに、プロジェクトが始まった「そもそも」
の話を聞きました。2回目は、組合員さんを代表して組合員理事の坪江利香さんにインタビュー。気になるアイスの内容が、ついに明らかに!?

—今回の商品開発プロジェクト。組合員さんはどんなふうに受け止めていますか?
商品開発に携わりたいという声は、ずっと組合員の中でありました。2年前ぐらいから特にその声が強くなって。私たち組合員理事の間でも「いつか実現できたらいいね」ということで髙森さんに相談していました。そうしたら去年(2023年)の春に「それじゃあ、アイスクリームでやってみようか」ということで、今回のプロジェクトが動き出しました。
アイスなら子どもも大人も好きだから「組合員のみんなも自分ゴトとして考えられるよね」となって、さっそくアンケートを取ることから始めたんです。

—商品開発にあたっては各地区のエリア委員さん、約120名が参加しました。
過去に組合員が参加して商品開発を行ったことはありますが、当時はコアなメンバーだけだったと聞いています。120名を超える組合員が、イチから開発に携わったのはたぶん初めてじゃないでしょうか。
まずはそれぞれの考えを全部出してもらおうと思って、食べたいアイスを一人につき3個ずつ提案してもらいました。そうしたら、当然といえば当然ですが、すごいバリエーションの回答が集まりました。中には「うちの地区のハッカを使ってほしい」「ご近所やさいのブルーベリーを使ってほしい」といった声もありました。やっぱり、みんな地域の生産者とのつながりを大切にしているんだなぁと改めて感じました。

—アンケートをもとに3つの候補に絞って試食を行いました。
はい。やっぱり食べないことには分からないということで、さくら食品には「ミルクジャム」「とうきび粒入り」「白ワインシャーベット」の3種類を123名分用意していただきました。しかも、エリア委員は全道にちらばっているので、各地区でエリア委員が集まるタイミングに合わせて発送までしてもらったんです。さくら食品の皆さんには本当に感謝しています。
私も試食しましたが、3つとも完成度が非常に高くて、「もう全部商品化しちゃおうよ!」と思いました。みんなも多分そうだったと思います。もちろんそうはいかないので試食後に商品化したいアイスを1つだけ選んでもらったのですが、ほぼ3分の1ずつに票が割れました。結果的には、シンプルに1番多く票を集めたフレーバーでいくことになりました。

—それは……。
「とうきび粒入り」です。

—とうきび粒入り! 野菜のアイスですね。
はい。北海道でとれる、北海道らしい農産物を生かしたアイスです。開発の途中段階では、とうきびの粒をクラッシュして食べやすくするか、粒のまんまゴロッと入れるかで意見が分かれましたが、最終的には「粒の食感がしっかり際立った方がインパクトもあっていいよね」という方向でまとまりました。先日、パッケージも決定し、現在は詰めの段階です。

—発売を待つばかりですね。振り返っていかがでしょうか?
商品作りに私たち組合員の声を取り入れてもらえたのは本当にうれしいことです。私たちのわがままに根気強く応じてくださったさくら食品の皆さん、提案を受け入れてくれた商品開発部の皆さんには感謝しています。
ぜひ全道200万人の組合員の皆さんには、同じ組合員の目線で作ったアイスを食べてもらいたいと願っています。

—話は変わりますが、そもそも坪江さんはどうして組合員活動に関わるようになったのでしょうか?
20年ぐらい前かな。当時やっていた子育てサークルで、エリア委員の方からつどい(コープ会をより多くの人に知ってもらうための集まり)のことを聞いたのが始まりです。それからコープ会や組合員活動の存在を知って、興味が湧きました。正直、子どもが生まれるまでは自分が食べるものについて考えたことなんてなかったんです。でも、子どもが生まれ、子どもには少しでも安心できるもの、自分が安全と思えるものを選びたい と考えるようになったタイミングで、コープの活動と出合いました。
それから旭川地区のエリア委員になって、副委員長をやって地区委員長(兼理事)になって、2020年から全道区の理事という形で活動に携わっています。昨年度は食と環境分野の担当ということで、学習会(組合員さんが集まって学ぶ会)の企画やセッティングを行ってきました。コープの自主基準について知ってもらったり、食品メーカーとの学習会や道の会議に出席して消費者として意見を言わせてもらうのも仕事です。

—どんな思いで学習会を企画していますか?
「知る」機会を提供したいと思っています。世の中には情報があふれていますが、新聞やメディアが伝えないこと、ネットで流れてくる偏った考えや不確かな情報など、いろいろあり過ぎてかえって本当のことが見えづらくなっています。学習会では、メーカーや専門の方から直接話を聞くことで、食について知る、考える場にできたら。
この商品はどうしてこの値段なのか。高いのにはどういった理由があるのか。反対に、安い商品はなぜ安いのか。背景を理解して、納得した上で食品を選択できるようになることが大事なのかなと思います。

—組合員活動を通じて、食を「知る」こと、「考える」ことを実践してきました。そして今回は商品を「作る」というところまで踏み込みました。
組合員による商品開発は、私たちの世代よりもずっと前から、伝統的に行われてきました。それこそ日本初の無添加ウインナーである「ママさんウインナー」のように、自分の子どもたちに少しでも安心できるものを与えたいという強い思いで、先輩方が立ち上がって商品を作り上げてきました。
最近では、食に関していえば、危険なもの、心配になるものはほとんど見かけなくなりました。これまで活動してくださった方々が声を上げてくれたおかげです。現在の安全・安心がどうやってもたらされたのか、安全・安心をいかにして勝ち取ってきたのかという経緯を、学習会を通してしっかりと学び、引き継いでいくことが大切だと考えています。

—生協運動の歴史があって、今の安全・安心があるということですね。それを踏まえて、今回の商品開発の意味合いはどんなところにあると思いますか?
諸先輩方が運動を通して積み上げてくださった歴史の延長線上に今があります。ですから、私たちはそこからさらに一歩進んだ商品開発を考えていかなくちゃならない時期に来ていると思っています。
じゃあ、それは何か? 個人的な思いかもしれませんが、「北海道のものを使って北海道の工場で作る」ことをこれからは大事にしたいと思っています。
北海道は日本の食料自給率を支える食の一大生産地です。でも、だんだんと人口が減る中で食品工場も減り、ものが作れなくなっているという現状があります。
今回のアイスクリームは小樽のさくら食品、コープさっぽろの関連会社ではありますが、北海道のメーカーと一緒にできたことに、すごく大きな意義があると思っています。

—商品を開発すること、それを買って味わうことが、北海道の製造業を応援することにつながるというわけですね。今後も商品開発を行うチャンスがあれば、やってみたいと思いますか?
もちろんです。今回は、普段から組合員活動に携わっているエリア委員のみんなに参加してもらいましたが、もし次の機会があれば、コープさっぽろの組合員であれば誰でも何かしらの形で商品開発に携われるような仕組み、やり方を考えられたらと思います。

—坪江さん、ありがとうございました。ただ商品を作ることが目的ではなく、その背景に北海道への思いがあることがよく分かりました。次回は、実際に商品を手がけたさくら食品株式会社に商品開発の裏側をお聞きします。



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