2026.2.3

-Story03- 「溶ける? 溶けない? ギリギリの戦いでした」 ——福山醸造のホンネ


商品開発のウラに、卓越した技術あり。今回は、たれづくりを技術面で支えた福山醸造の福山誠司専務取締役と製造管理部の小川裕子さんに話を聞きました。「みたらし風」納豆のたれ開発は、130年以上の歴史を持つ福山醸造にとっても初めての挑戦。開発を担当した小川さんは、「難易度の高いお題だった」と振り返ります。

「溶ける限界」と「理想の甘さ」の間で。

——本日はよろしくお願いします。

福山さん よろしくお願いします。今回、納豆のたれを開発したのが小川なので、今日の主役は彼女ですね(笑)。
小川さん 緊張します。

——大丈夫です。動画じゃないので(笑)。小川さんは普段、どんなお仕事をされていますか。

小川さん 品質管理と商品開発を担当しています。加工食品部門に所属していて、しょうゆや味噌を使ったものを含め、たれ全般の開発に携わっています。業務用では焼き鳥や焼肉のたれ、市販品ではめんつゆや鍋用つゆ、ドレッシングなど、幅広く担当しています。
福山さん 自社商品では、「北海道の醤油蔵謹製 万能つゆ」や、鍋つゆの「鮭うましゃぶ醤油仕立て」など、主力商品の開発を担ってもらっています。

——数多くの商品開発を手がけてこられた中で、「みたらし風」納豆のたれは?

小川さん 初めてですね。私自身、納豆にお砂糖をかけたことはなかったんです。ただ、昔、祖父が納豆に砂糖をドサッとかけて、しょうゆを垂らし、かき混ぜて食べていたのを覚えています。
祖父は岩見沢の炭鉱で働いていました。
福山さん 地域や年代、ご家庭によって、納豆に砂糖をかける方がいらっしゃいますよね。北海道の食文化の一つなのかもしれません。
小川さん ただ、それを「たれ」として再現するとなると、話は別で。私たちは、工場で再現できないものを商品として世に出すわけにはいきません。製造条件をクリアしながら、ご要望の味をどう実現するか。その中で一番のネックになったのが、やはり砂糖でした。祖父もそうでしたが、ご家庭では砂糖が完全に溶けきらない状態で食べているはずです。でも、工場では完全に溶けていないと製品化できない。砂糖を控えれば溶けるけれど甘みが足りない。甘みを優先すれば、溶け残るリスクが出てくる。どこまで砂糖を加えられるのか。製品化の限界と理想の甘さを天秤にかけながら、少しずつ配合を変えて、何度も試作を重ねました。

難易度が一気に上がりました。

——そうしてできたのが、1回目の試食会のサンプルですね。この段階ではまだ「みたらし風」を商品化するかどうかは決まっていなかった。選ばれたと聞いて、どう思いましたか?
小川さん うれしかったです。でも正直、びっくりしました。味に自信がなかったわけではないんです。ただ、これまで類似品を見たことがなく、かなりエッジのきいた商品だから、どこまで受け入れられるのかは未知数でした。私自身、最初は祖父を思い浮かべるくらい「昔の味」という認識だったので、今の人たちにもニーズがあると知って驚きました。

——採用と同時に、いくつか宿題も出たそうですね。
小川さん はい。大きく二つ、原材料についてのご要望がありました。一つはしょうゆです。サンプルではコストを抑えるために一般的なしょうゆを使っていましたが、北海道産丸大豆使用のしょうゆに切り替えてほしいというご要望でした。もう一つが砂糖です。サンプルは北海道産てんさい糖の上白糖でしたが、てんさい糖のブラウンシュガーにしてほしいと。実は、ブラウンシュガーは上白糖に比べて甘さが控えめなんです。てんさいの煮汁を詰め、精製せずにつくるため、うま味やコク、ミネラル分は多いのですが、その分、甘さが前に出にくい。ここで一気に難易度が上がりました。

——その課題を、どう乗り越えたのでしょうか。
小川さん 味を補強するため、北海道産てんさい糖から作られた糖蜜を使いました。糖蜜は、砂糖よりもうま味やコクがしっかりとしています。サンプルの段階でも糖蜜は使っていましたが、ブラウンシュガーと糖蜜の配合バランスを細かく調整することで、甘みをしっかりと感じつつ、うま味とコクのある「みたらし風」のたれに仕上げることができました。

声と向き合って、生まれた手応え。

——苦労の末に完成した「みたらし風」のたれ。30代の若い組合員さんからも好評だったと聞いています。
小川さん それは、すごくうれしいです。祖父のイメージが強かったので。(笑)

——組合員さんの声を聞きながらの商品開発を振り返って、いかがでしょうか。
小川さん 商品開発には長く携わってきましたが、消費者の方が実際に何を感じ、どう受け止めているのかを、ここまでダイレクトに聞く機会は、これまでありませんでした。そうした場に立ち会えたことを、とてもありがたく感じています。要望に応えていくのは決して簡単ではありませんが、もしまた機会があれば、ぜひ挑戦してみたいです。

——福山専務にも伺います。今回は、消費者である組合員さんの要望に寄り添い、伴走する立場での商品開発でした。振り返って、いかがでしょうか。
福山さん メーカーは本来、「もっとこうだったらいいのに」「こんな商品があれば」という、消費者の潜在的なニーズまで想像し、形にしていく役割を担っています。ただし、一歩間違えれば、それはメーカー側の独りよがりになってしまう。今回は、組合員さんの声を実際に聞き、キャッチボールを重ねながら商品開発ができたことを、とても貴重な機会だと感じています。北海道の食文化の一つとも言える「甘い納豆たれ」の開発を通じて得られたノウハウは、北海道に根ざしたメーカーとしても、大きな財産になりました。「懐かしい」と感じていただける方がいる一方で、「新しい発見」と受け取る方もいると思います。老若男女、幅広い組合員さんに楽しんでいただけたら、これ以上うれしいことはありません。

——福山さん、小川さん、ありがとうございました。今回の「みたらし風ひきわり納豆」は、組合員さんの「食べてみたい」という声を受け止め、技術で応え、何度も対話を重ねながらかたちにしていった、まさに“みんなでつくった納豆”です。福山醸造の皆さんが積み重ねてきた技術と、北海道の食文化に真摯に向き合う姿勢があったからこそ、この味にたどり着きました。
次回はいよいよ最終回。販売計画を担当するコープさっぽろのバイヤーのインタビューをお届けします。

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