2025.11.12
-Story01- 「たれ作りがゴールじゃない」 企画した商品開発部長の証言

コープさっぽろの組合員さんが主役となって挑んだ、お惣菜のたれ開発ストーリー。第1回は、このプロジェクトを企画した商品開発部の髙森雄輔さんにお話を伺います。多くのメンバーが関わる中、その調整に苦労したという髙森さん。それでも、自信をもって提供できるたれに仕上がったのは「組合員さんのおかげ」と笑顔で語ります。
さまざまな立場から、さまざまな視点で。

——さっそくですが、今回はなぜ「たれ」をテーマにしたのでしょうか?
2カ月に1度、組合員さんの代表である組合員理事に、コープさっぽろ商品の試食をしてもらう機会があります。その際に「ちょっとしょっぱいね」「私には甘すぎるかな」といったご意見をいただくことがあります。味の感じ方は習慣や好みによっても違うので、10人いれば10人が「おいしい」と思うものを作るのは難しい。だからこそ、味決めの段階から皆さんの意見を聞いてみたい。そんな思いが出発点でした。
コープさっぽろでは「大惣菜化プロジェクト」といって、お店の各コーナー(農産・畜産・水産)で扱う食材を使った、店内調理のできたてのお惣菜を販売しています。今回は、その味付けに使う「たれ」を、組合員さんと一緒に開発することにしました。
——どんな「たれ」ですか?
お店のコーナーごとに、一つずつ新しい「たれ」を作ることにしました。農産部はサラダ用のドレッシング、畜産部はハンバーグのソース、水産部は漬け魚のたれです。
せっかくなら、味のベースにコープさっぽろのPB商品「米麹が生きる白こし生みそ」か、北海道100シリーズの「道産大豆100%使用丸大豆の特選醤油」を使おう——それを共通のルールにしました。
——3つの部門にまたがるということは、関わる人も多くなりますね?
はい。それに加えて今回は、みそ・しょうゆの原料メーカーである福山醸造さんと、実際にたれを開発・製造するメーカーさんの協力が不可欠。それぞれをつなぐのが、最初の私の役割でした。
たれメーカーの中には、特殊原料を持ち込むことに難色を示す場合もあります。そこで、そうした要望にも柔軟に対応し、一緒に取り組んでくださるメーカーとして、札幌市に本社を置くアイビックさんにお願いしました。
また、農産・畜産・水産の各部門からは、大惣菜化プロジェクトの担当バイヤーが参加。さまざまな立場、さまざまな視点が交わる中で、たれづくりが進んでいきました。
ダメならゼロからやり直す覚悟でした。

——それぞれ、どんな「たれ」を、どのように開発したのでしょうか。
まずは目標を設定しました。農産部はお店で一番売れているQ社のドレッシングを、畜産部は売れ筋の和風ハンバーグソースを、水産部は一番売れている味噌漬けのたれを、それぞれベンチマーク。それを上回る「たれ」を作ることを目標にしました。
1回目の試食会で、ドレッシングは一発クリア。ベンチマーク商品との味比べでは、試作品の玉ねぎドレッシングがほぼ満票で勝ちました。ところが、和風ハンバーグソースと味噌漬けのたれは、ほぼ引き分け。「ちょっとヤバいぞ」ということで、組合員さんからの意見をもとに味の調整を行いました。
その結果、2回目の試食会では、両方とも合格ラインに到達しました。
とはいえ、試食会に参加しているのは、あくまで十数人の組合員理事。そこで、各地域に持ち帰り、エリア委員の皆さんにも試食してもらいました。結果として8割を超える高評価を得たので、ようやく「自信を持って出せる」味になりました。
もしダメだったら、もう一度ゼロクリアでやり直す覚悟だったので、正直ほっとしました。
——開発を通じて印象的だったことは?
組合員さんからは味の評価だけでなく、「ハンバーグソースはステーキにも使えそう」「ドレッシングはいろんなサラダに使いたいよね」といった、次につながるヒントをたくさんいただきました。
実際に、ドレッシングはボトルでの商品化も進めていますし、今回開発した「たれ」をほかのお惣菜にも生かせないか検討を始めています。
「たれ」を作って終わりではなく、新しい展開へとつながるきっかけになりました。
一緒に、次の「おいしい」を開拓したい。

——完成した「たれ」を、どんなふうに楽しんでほしいですか?
まずは多くの組合員さんに、新しい味のお惣菜を味わってほしいですね。そして、もし「たれ」を気に入っていただけたら、ベースとなっている「米麹が生きる白こし生みそ」や「道産大豆100%使用丸大豆の特選醤油」も手に取ってもらえたらうれしいです。
——「北海道産とうきびアイス」や「濃厚つゆ」など、これまでも組合員さんと一緒に商品づくりを行ってきましたが、改めていかがでしょうか?
組合員理事の皆さんは、いつも前向きで、消費者目線から率直な意見をくださいます。その言葉一つひとつに気づきがあり、私たちにとっては毎回が勉強です。
今回初めてプロジェクトに参加したバイヤーも、きっと刺激を受けたと思います。
コープさっぽろがほかのスーパーマーケットと決定的に異なるのは、組合員さんがただの消費者ではないという点です。出資を通して経営に参画し、活動を通して運営にも関わってくださっている。そんな顔の見える組合員さんが、責任を持って私たちと一緒に商品開発に取り組んでくださっています。
プロモーションのための”アリバイ”的な関わりではなく、当事者意識を持って、本当に必要なものを深掘りしながら共に創る。それが、コープさっぽろの最大の強みです。
今後も、既存商品の改良や新製品の開発に、より多くの組合員さんに参画していただけるよう、取り組みの仕組みを含めてブラッシュアップしていきたいと考えています。
——髙森さん、ありがとうございました。次回は組合員さんのインタビューをお届けします。



